竹内レッスン感想「のどを開け放して」 

のどを開け放(あけはな)して
 ~竹内さんの歌のレッスン~ (西田 逸夫)

・歌詞の意味を考えて
 「では次に『どこかで春が』を歌いましょう」と竹内敏晴さんが言う。模造紙に大きな字で書かれた歌詞が、壁に掲げられる。


  どこかで春が 生まれてる
  どこかで水が 流れ出す
  どこかで雲雀(ひばり)が 啼(な)いている
  どこかで芽の出る 音がする
  山の三月 東風(こち)吹いて
  どこかで春が 生まれてる


 「さあ、では歌いましょう」などと、竹内さんのレッスンではすぐに歌い出さない。まず、歌詞の意味をみんなで考えるのである。歌詞の中に幾つも出て来る「どこかで」、どれもが同じ意味だろうか? どれも同じように歌って、良いのだろうか?




・感じ響くからだになる
 5月17日の午後、應典院(おうてんいん)の会場に20数人の仲間が集まって、歌のレッスンが始まった。少し話をし、みんなの反応を見て竹内さんがまず決めたのは、全員の「からだほぐし」をじっくり行うことだった。歌の歌詞の意味をちゃんと考え、感じ取って歌として表現するには、こわばり、凝り固まったままのからだでは駄目なのだ。2人ずつペアになり、3時間かけてたっぷりと互いのからだを揺らし、ほぐした。会場全体の緊張もほぐれ、適度に身体も温まって、レッスンへの期待も大いに高まる。

・この歌詞、その振り、おかしくない?
 まず歌ったのは、「大きな栗の木の下で」(大きな栗の木の下で あなたとわたし …)。幼稚園や保育所で習った振り付けを思い出しながら、みんなで一緒に歌い踊ってみる。「ところで、この歌詞、その振り、おかしくない?」と、竹内さんのことば。言われてみれば、歌詞も振り付けも不自然なのだが、小さい頃から疑いを持たずに歌い踊って来た私たち。いきなりそれに気づかされた。
 続いて、「海」(海は広いな 大きいな …)「茶摘み」(夏も近づく 八十八夜 …)「もみじ」(あきのゆうひに てるやまもみじ …)などの唱歌の歌詞を、竹内さんの話を聞いて考え直した。途中、「茶摘み」をみんなで歌ったりもした。

・声を伸びやかに出す
 1日目の最後には、声を思い切り発散できる歌ということで「花」(春のうららの 隅田川 …)を歌った。4人ずつ組んで少し練習した後、一人ひとりが竹内さんから直々にレッスンを受ける。
 まったくと言っていいくらい声が出ていなかった人も少しは出るようになり、小さな声だった人が響きのある歌声になり、からだの内にくぐもっていた人の声が外に響き出るようになり、近くにしか届かなかった人の声が遠くまで届くようになり、中には伸びやかな声で朗々と歌えるようになった人も何人か出た。

・春をむかえに
 さて2日目。この日は朝からのレッスン。「どじょっこふなっこ」(春になれば すがこもとけて …)「春よ来い」(春よ来い 早く来い …)「早春賦」(春は名のみの 風のさむさや …)と、近づく春を迎える気持ちを歌う歌が続く。1日目に充分にほぐしてもらったからだは朝から調子良く、快調に声が出る。もちろん、歌詞を1句ごとに味わい、ふさわしい表現を意識しながら歌うのである。

・5つの「どこかで」の違い
 次に歌ったのが、「どこかで春が」。歌詞が貼り出され、竹内さんが参加者に質問する。5回出て来る「どこかで」、どれもが同じ意味だろうか?
竹内さんの話を聴きつつ歌詞を味わい直すと、全部意味が少しずつ違っているのが分かる。そう気づけば、全部を違った風に歌わないと、歌詞を表現し切れない。
 春を迎え、春を味わう歌は、このあと「朧月夜」(菜の花畠に 入り日薄れ …)「蝶々」(蝶々 蝶々 菜の葉にとまれ …)「春が来た」(春が来た 春が来た どこに来た …)「春の唄」(ラララ 赤い花束 車に積んで …)と続いた。

・のどを絞(し)めるな
 報告の最後に大事なことを。
 竹内さんレッスンの大きな特徴は、竹内さんが声について気づいたことを、すぐその場で指摘されることである。例えば誰かに歌わせてみて声が充分に出ていないと分かれば、すぐに指摘し、助言し、それでも駄目なら「産婆役」を務めて発声を助ける。誰かが何かの質問をしても、それがのどを絞めた声や息を詰らせた声だったりすると、まずそれを指摘し、発声の問題が(幾分かでも)解決してから、質問への回答を始められる。
 相手が一人の場合だけではない。今回のように、20数人が一斉に歌うような場合でもそれは変わらない。全員で歌い始めても、何人かがのどを絞めて歌っているのに気づくと、すぐに中断して歌い直しを指示される。「のどを絞めるな」「のどを開け放して声を出せ」という竹内さんの声が、レッスンの間中、会場に響き渡ったのである。

※竹内さんの歌のレッスン 2008.05.17~05.18@大阪・應典院
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by osp_blog | 2008-05-18 00:00 | その他イベント

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