観劇記「私を包み込んだ感動」 

私を包み込んだ感動
 ~関西芸術座『青い鳥』公演を観て~ (西田 逸夫)

 関西芸術座の『青い鳥』公演を観た。
 仕事帰り、開演ギリギリに駆けつけると、ほぼ満席の劇場の最前列に、吃音教室常連の見慣れた顔が並んでいた。確保しておいてもらった席に座ると、薄暗い舞台に青い4つのついたてが立っている。シンプルな舞台装置が、始まる劇へのワクワクをかき立てる。




 『青い鳥』は、重松清さんの小説が元になっている。原作は8つの話からなる小説で、そのすべてに村内先生という吃音の先生が登場し、それぞれの話の主人公の孤独な中学生に「たいせつなこと」を伝える。それぞれの重さを持った話なのに、読むと、村内先生の人柄に触れて温かい気持ちになる。元気づけられる。2006年の春、この小説の連載が始まった時には、吃音の先生が主人公だということと、その内容の素晴らしさが仲間うちの話題になった。最初の話「ハンカチ」が載った紙面を、コピーして回し読みしたものだ。

 今年の7月、関西芸術座の女優さん(古沢さん)が吃音教室を訪ねて来た。『青い鳥』公演でどもる女性を演じることになり、役作りに困っているとのことだった。古沢さんはとても熱心に、それから毎週のように例会に参加された。公演間近には村内先生役の俳優さん(南谷さん)も例会に参加され、大役を演じる直前の不安を語って下さった。
 そんなこんながあって、この公演を観るのを楽しみにしていた。重松さんの小説が舞台でどんな風に表現されるのかも楽しみだったし、すっかり仲間だと思えるようになった古沢さん、南谷さんが、どんな演技を見せてくれるのかも楽しみだった。

 劇が始まってすぐ、さまざまな脚色が施されていることに気が付いた。脚色と演出の工夫で、「たいせつなこと」を伝える村内先生の姿が、見事に舞台に移し替えられていた。この公演が原作のテーマを忠実に表現しようとしているものだと分かり、安心して観客席に身を預けた。
 南谷さん演じる村内先生にハラハラしたり、古沢さんの迫真の演技に見入ったりするうち、いつしか劇は終わっていた。手が自然に拍手をしていた。気が付くと私のからだは、「分厚い感動」とでも名付けるしかないものに包まれていた。

 観劇後に、原作を何度も読み直した。読み直して、気がついた。原作には「たいせつなことはどもってでも伝えなければならない」というメッセージが描かれているだけでなく、「大切なことを本気で伝えようとすればきっと伝わる」というメッセージが埋め込まれている。そして関西芸術座の公演でも、この2つのメッセージが表明されている。
 若い頃の私は、どもりで苦しんだ以上に、自分が周囲に分かってもらえなくて苦しんだ。この2つのメッセージは、その頃の私がのどが渇くように求めていたものでもある。

 この公演は今後、日本各地の中学校を回ると聞く。巡業公演の成功を、心から応援したい。どもりの子どもたちのためにも。孤独に悩む子どもたちのためにも。


※関西芸術座『青い鳥』公演 2008.09.03~09.07@大阪・天下茶屋
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by osp_blog | 2008-09-07 00:00 | その他イベント

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